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最高裁判所第三小法廷 昭和38年(オ)806号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人徳永平次の上告理由第一点について。

所論は、上告人らが原審において原判決確定の仮登記がなされていることを争つているのに、原判決は、これを争いがないとして証拠によらないで右事実を確定した違法があるというが、記録によると、上告人らは、第一審以来右仮登記の存在を自ら主張していることが明らかであるから、論旨は前提を欠く。

また、原判決の事実認定を争う所論は、上告適法の理由とならないし、原判決に理由齟齬の違法があるという所論も、所論指摘の原判決判示をもつて、理由齟齬に当るとはいえない(第二点に対する本判決理由参照)。

論旨はすべて採用できない。

同第二点について。

所論は、原判決が控訴人(上告人)安岡は被控訴人(被上告人)より交付を受けた手形、小切手により二六万八〇〇〇円の現金を入手したに止まることを認定しながら、右両者間に金額三〇万円についての消費貸借の成立を認めたのは、民法五八七条の解釈の誤り、審理不尽、理由不備の違法があるという。

しかしながら、原判決は、被控訴人は、本件消費貸借契約の締結に当り、その金銭貸与の方法として控訴人安岡宛振り出した金額一〇万円の小切手は、間もなく支払われ、また、金額一〇万円の約束手形二通は、満期に支払われた旨の事実を確定しているのであるから、被控訴人と控訴人安岡との間に合計三〇万円についての金銭消費貸借の成立を肯定した原判決は、結局、正当であり、原判決に所論の違法がない。

論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 石坂修一 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎)

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